2015年8月7日金曜日

キサラギ……大の大人が売れないアイドル囲んで右往左往

2007年/日本
佐藤祐市監督


あらすじ:
自殺したアイドルは自殺じゃなくて他殺かもしれませんでした。


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私にとっての小栗旬はこの映画のイメージだ、と言うとビックリされます。
世間様では「クローズ」シリーズやら「ごくせん」やらのイメージが小栗旬のパブリックイメージというか、よくやる役柄らしいですね。私どれも観てませんので全然ピンときてないのですが、どうやらとっぽい兄ちゃんなんだなと。むしろこちらの方が驚きなんですが。
邦画をあまり観ないせいもあって、私はこの映画の影響で小栗旬は「朴訥で純真で不器用で真面目」みたいなイメージあったんだけども、その後いろんなところで彼を見かけるようになってからは、あらあら、まあまあ……とっぽいわ……騙されたわ……という気持ちになりました。
誰も騙してなんかないけども。
とっぽいて。
もちろん今となっても小栗旬は好きです。良い俳優よね。

ともかく今これを振り返ってみると、小栗旬って幅の広い俳優なんだなあって凄く感心するわけです。

「意外だわあ」というのは小栗旬に限った話ではなく、この映画観てると「塚地無我って演技うまいんだなあ!」とか「香川照之ってこんなこともすんのなあ!」とか、いちいち俳優の意外性にびっくりできるんですよね。絶妙。キャスティングがとても絶妙です。
香川照之に至っては「ゆれる」を観てからこの「キサラギ」を観ると謎のショックを受けることができます。何か分からないけど何かを確実に失った気持ちになれます。

2015年現在の今となっては彼らの意外性にもだいぶ慣れてきましたけども、2007年だから……8年前か、8年前観た時には本当に新鮮に映りました。

この映画、私の大好きな密室劇なんですけども、やっぱり密室劇って飽きない。ワンシチュエーションゆえに工夫して観客を楽しませようとしているのが見える映画ってとても良いですね。

内容的には、一年前に亡くなった、売れないアイドルの一周忌のためにオフ会に集まってきたオタク共5人の中に、実はアイドルを殺した犯人がいる…?というお話なのですが、あらすじで受ける印象ほどあんまり深刻じゃない。出てくるキャラクターがどこかみんな抜けてるのもあるし、まず死んだアイドルがもう、「そりゃ売れねえわ」感が物凄くてその時点でなんか、悲しみ切れないんですよね。こういうところうまいと思う。現実だったらそんな事言えないんだと思うんだけど、この子ほんと、本当に残念な子で、そこ含めてすべてこのファンたちに愛されてるのが分かっちゃって、「殺されたから可哀想だ」みたいな感じがとても薄い。なんかこう、「何もないところでつまづいてころんだら、なぜか足じゃなくて肋骨の骨にヒビ入ってた、可哀想」みたいな、同情はするけど不思議なおかしみがあるくらいのライトさで彼女の死を捉えちゃうんですね。
一応サスペンスだとは思うんですが、そのせいであんまり緊張せずに観ることができます。

この映画観てると、この人たち現場ですごく仲が良いんだろうなあっていうのが窺えるんですよね。男ばっかりで登場人物も少ないからかもしれませんが、連帯感がスクリーンから滲み出ている感じ。対立してたとしてもある種の信頼感が見える気がします。多分、ラストのせいもあると思うんだけど。
大の大人が売れないアイドルを本気で好きだっていうの、本当に面白いですよね。アイドルに限らず、飼っている犬や猫や、愛でている観葉植物や、そういった愛するものの前でメロメロになっている人の様子って、距離を置いた人からすると大変滑稽でおかしく見えたりするものです。私もよくいろんなものを愛して気が狂っている様を「面白い」と評されることがあります。余計なお世話だよ。
でもそういう風に好きなもののために満面の笑み浮かべて一生懸命右往左往している人を見るのって、すごくあったかい気持ちになりますね。サスペンスですけど、すごくハートウォーミングでもあります。あたたかい気持ちになりたい時にはぜひおすすめです。
でもまあひとつだけ、スタッフロール最後のおまけは絶対蛇足だと思うよ。


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