2014年/アメリカ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督
あらすじ:
落ち目のハリウッドスターが再起をかけてブロードウェイに進出します。
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私の愛してやまない作家のひとりに、伊藤計劃と言う方がいるのですが。
この方はノベライズや共作以外のオリジナル作品としてはたった2作を残して夭折した、素晴らしい才能を持ったSF作家だったのですが、大の映画好きでもありまして、作家になる前から独特な目線で映画の感想をブログにしたためておられました。
その中に、こういった一節があります。
まず、映画は「テーマを観に行くものではない」ということです。
宣伝文句で言われていることは、大体の場合映画の作り手の意思とは何の関係もありません。「ミュンヘン」を観て「テーマがよくわからなかった」などという人は、映画を観に映画館に行っているわけではないのです。代理店のコピーライターが考えた数行のキャッチコピーを、わざわざ1800円払って映画館に確認しにいっているだけなのです。
映画とは、そこにただある映像に過ぎません。
この方はノベライズや共作以外のオリジナル作品としてはたった2作を残して夭折した、素晴らしい才能を持ったSF作家だったのですが、大の映画好きでもありまして、作家になる前から独特な目線で映画の感想をブログにしたためておられました。
その中に、こういった一節があります。
まず、映画は「テーマを観に行くものではない」ということです。
宣伝文句で言われていることは、大体の場合映画の作り手の意思とは何の関係もありません。「ミュンヘン」を観て「テーマがよくわからなかった」などという人は、映画を観に映画館に行っているわけではないのです。代理店のコピーライターが考えた数行のキャッチコピーを、わざわざ1800円払って映画館に確認しにいっているだけなのです。
映画とは、そこにただある映像に過ぎません。
この映画のレビューを眺めていると、「テーマ/伝えたいことがよく分からなかった」という一節を時々見かけました。
大変残念な映画の見方だと思います。キャッチコピーでは分からない、言葉にできない何かを得ようと意識を持って映画を観たいものだな、と思います。
とはいえ、私もうまく何かをキャッチできているのか、与えられた分だけでも得られているのか、非常に不安なところではありますが。お金を払い数時間かけて映画を観るからには、テーマ以外の何かを一つでも多く拾っていきたいよね。この日記を読んで以降、自分の肝に銘じ、強く意識していることでもあります。
というわけでバードマン。
冒頭からびっくりするんだけど、主人公であるところのマイケル・キートンは超能力を使えるんですよね。予告編観てるとそういうファンタジー要素あるのかな?とは思ってたけど、まさかそんなあからさまに浮遊してるとは思わなくてびっくりしました。
といっても、あからさまに超能力らしき何かを使っているシーンって彼が1人きりの時に限られている。本当に超能力の使い手なのか、妄想なのかが分からないんですね。
はっきり言ってしまえば、彼が本当に超能力を使えるかどうかはどうでもいいわけです。彼は超能力を使えると思っていて、不可解な事象を自分の力のせいと捉え、それに振り回されているという事実だけが大事なのです。
そのあたり大変絶妙で良い。いい年こいたおっさんが60年代のコメディドラマみたいに指先ひとつでいろんなものを浮かしてみたりするような、ステレオタイプな超能力の使い方しちゃうのが何とも言えず滑稽です。超能力のタイプが古いんよね。「奥様は魔女」みたいなさ。若くて美人な奥様が使うからチャーミングに見えたしぐさも、くたびれたおっさんが人差し指でビシッと指さして家具とか動かそうとするのって、「お前大丈夫か」って心配したくなっちゃうよね。
娘役のエマ・ストーンは今作で存在を知ったのですが、すごく、すごくいい女優ですね!チャーミングだし、若者らしく自分を見失って無軌道にさまよっている。怠惰で、傲慢で、尊大で、脆い。若者って凄く複雑で面倒ですけど、それだけ魅力的で、そういった若者のすべてをうまく表現できる稀有な方だなあと思いました。
私は半分以上エドワード・ノートン目当てで観に行ったんですけど、やっぱ彼も上手だねえ。
彼の演じるマイクは、何にも考えてないんだろうな、きっと。俳優業も、天才的な勘で上手に演じることができるんだけど、若かったころに持っていたような情熱みたいなものはとっくに失われていて、演劇にリアルを求めているなんていうのは後付の言い訳で、実際は舞台の上で酒を飲みたくなったから飲むし、セックスしたくなったからしようとしたんだろうな。演劇が好きならたとえリアルを追及したとしてもそんな事しないでしょ。その場は臨場感が出たとしても、次のシークエンスはどうするんだよって話じゃん。
彼だけはあんまり、救われた気がしませんでした。最後まで自暴自棄な振る舞いをして、流されていただけに見えました。まあ最終的に流された先の選択は、悪いものではなかったとは思うけれど。
そういう風に、実は割と複雑な人間であるマイクを演じきってて、ノートン凄いなーって。グランド・ブダペスト・ホテルで生真面目な軍警察の大尉を演じているのを見たばかりだったのでなおさら思いました。
けどまあもうちょっと際立ってくれてもよかったかなあって。作中のマイケル・キートンとの演技合戦ではやっぱりマイケル・キートンが圧倒していたなって思いました。まあそういう話なんだからしょうがないんだけどさ。マイケル・キートンが身の上話をして泣き出すシーンは息を飲みます。
余談ですが私のマイベスト・エドワード・ノートンは「アメリカン・ヒストリーX」です。いつか記事にしたい。
本作はドラムがね、BGMのドラムが非常に良いです。むちゃくちゃかっこいいし、ストーリーに寄り添っていて心地よい。あ、予告で流れていた曲は本編では一切流れません。そこすんごいビックリしたけど、まあ、本編とは関係ない所だし、ドラムはかっこよかったので、良い。
↑励みになります!よろしくお願いします!
冒頭からびっくりするんだけど、主人公であるところのマイケル・キートンは超能力を使えるんですよね。予告編観てるとそういうファンタジー要素あるのかな?とは思ってたけど、まさかそんなあからさまに浮遊してるとは思わなくてびっくりしました。
といっても、あからさまに超能力らしき何かを使っているシーンって彼が1人きりの時に限られている。本当に超能力の使い手なのか、妄想なのかが分からないんですね。
はっきり言ってしまえば、彼が本当に超能力を使えるかどうかはどうでもいいわけです。彼は超能力を使えると思っていて、不可解な事象を自分の力のせいと捉え、それに振り回されているという事実だけが大事なのです。
そのあたり大変絶妙で良い。いい年こいたおっさんが60年代のコメディドラマみたいに指先ひとつでいろんなものを浮かしてみたりするような、ステレオタイプな超能力の使い方しちゃうのが何とも言えず滑稽です。超能力のタイプが古いんよね。「奥様は魔女」みたいなさ。若くて美人な奥様が使うからチャーミングに見えたしぐさも、くたびれたおっさんが人差し指でビシッと指さして家具とか動かそうとするのって、「お前大丈夫か」って心配したくなっちゃうよね。
娘役のエマ・ストーンは今作で存在を知ったのですが、すごく、すごくいい女優ですね!チャーミングだし、若者らしく自分を見失って無軌道にさまよっている。怠惰で、傲慢で、尊大で、脆い。若者って凄く複雑で面倒ですけど、それだけ魅力的で、そういった若者のすべてをうまく表現できる稀有な方だなあと思いました。
私は半分以上エドワード・ノートン目当てで観に行ったんですけど、やっぱ彼も上手だねえ。
彼の演じるマイクは、何にも考えてないんだろうな、きっと。俳優業も、天才的な勘で上手に演じることができるんだけど、若かったころに持っていたような情熱みたいなものはとっくに失われていて、演劇にリアルを求めているなんていうのは後付の言い訳で、実際は舞台の上で酒を飲みたくなったから飲むし、セックスしたくなったからしようとしたんだろうな。演劇が好きならたとえリアルを追及したとしてもそんな事しないでしょ。その場は臨場感が出たとしても、次のシークエンスはどうするんだよって話じゃん。
彼だけはあんまり、救われた気がしませんでした。最後まで自暴自棄な振る舞いをして、流されていただけに見えました。まあ最終的に流された先の選択は、悪いものではなかったとは思うけれど。
そういう風に、実は割と複雑な人間であるマイクを演じきってて、ノートン凄いなーって。グランド・ブダペスト・ホテルで生真面目な軍警察の大尉を演じているのを見たばかりだったのでなおさら思いました。
けどまあもうちょっと際立ってくれてもよかったかなあって。作中のマイケル・キートンとの演技合戦ではやっぱりマイケル・キートンが圧倒していたなって思いました。まあそういう話なんだからしょうがないんだけどさ。マイケル・キートンが身の上話をして泣き出すシーンは息を飲みます。
余談ですが私のマイベスト・エドワード・ノートンは「アメリカン・ヒストリーX」です。いつか記事にしたい。
本作はドラムがね、BGMのドラムが非常に良いです。むちゃくちゃかっこいいし、ストーリーに寄り添っていて心地よい。あ、予告で流れていた曲は本編では一切流れません。そこすんごいビックリしたけど、まあ、本編とは関係ない所だし、ドラムはかっこよかったので、良い。
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