2015年7月15日水曜日

運命じゃない人……11桁の数字とそれにがっついていく監督の主張


2005年/日本
内田けんじ監督


あらすじ:
「運命」に翻弄されて主人公以外が右往左往します。


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別に避けていたわけではないのですが、ここにきて初めての邦画紹介になりました。基本的に何でも分け隔てなく映画を観るというタイプではないので、ピンときた映画に邦画が少ないというのはあるかもしれません。まあ単純に考えて、世界中で新しい映画が生まれているのだから、その中の日本作品となると必然的に観る本数も減る、のかもしれない。その割にアメリカ映画がほとんどな気もするのでちょっと詭弁な気もしないでもない。

内田けんじ監督作品、好きです。
「運命じゃない人」「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」観ましたけど、どれもいいですね。唯一「WEEKEND BLUES」だけ観てませんが、調べてみたらamazonで高騰してる……面白いんだろうか……。
主人公の方、時々脇役でお見かけする方ですね。この人を主人公に据えるとかなかなかちょっと、なんというか、うーん、勇気がいるというかアレ(濁した)だなと思うんですけど、この作品ではそれがよく合っています。抜けている感じとか、華がない感じとか、ちょっと棒読みだとか(ああ結局言ってしまった)。
彼のその周囲が何も見えていない、何も考えていない感じが凄くこの作品にマッチしていました。ちょっと華のある俳優を使ったらこの作品の説得力が半減してしまうだろうなと思います。褒めてるようで全然褒めてない。褒めたい。褒めてるつもりです。頑張ってます。

この映画で一番メッセージ性を感じるのは、何と言っても主人公の親友が、失恋したての主人公に向かって次へ踏み出すよう説得するシーンの一連のセリフですね。

「お前電話番号なめんなよ」

「あの11桁の数字を知っているか知らないかで、赤の他人かそうでないかを分けるんだから」

「タイミングなんてないよ、お前が作るんだよ、タイミングを。」

「30過ぎたら、もう運命の出会いとか、自然な出会いとか、友達から始まって徐々に惹かれ合ってラブラブとか、一切ないからな。もうクラス替えとか、文化祭とかないんだよ。自分でなんとかしないと、ずーっと一人ぼっちだぞ、絶対に、ずーっと」

……分かってるよ!!!

冒頭から、主人公を通り越して「恋愛はしたいけどがっついていくのはなんか違うし、タイミングもなかなかないからなあ」と日和っているような人間に説教してくるんですよね。
なんだかものすごくメッセージ性を感じる…すんごい感じる……!と思っていたら、案の定脚本も手がけている内田監督が当時普段から言っていたセリフだそうです。公式サイトのインタビューにそのくだりが載っております。10年前の映画なのにまだ公式サイト残ってるんだね。凄いな。
内田監督らしくすごくギミックの凝った作品で、物の見え方が二転三転しますが、この映画で何を伝えたいかって言ったらごくシンプルに「運命なんてないから自らで切り開いていきなさいよ」って事なんでしょう。
言いたいことは分かるけど余計なお世話だよ!

「運命」って、どう捉えるかで変わる、定義の難しいものだと思います。この話も元カノの事は別れた時点で「運命じゃない人」だったとも言えるし、「元カノに出会って引き込まれる一連の出来事は運命だった」ともいえる訳で、「運命の人=自分の一生を捧げる恋人」という考えにはちょっと違和感があるんですね。この映画のタイトル「運命じゃない人」は、運命なようで、運命じゃないようで、どっちで呼んでも良い物事をあえてそう呼んだ、というものを含んでいるように感じます。
観る人にとっては「運命の人」と捉えられるラストではありますが、「運命ではないよ。運命を切り開くのは自分だよ」という監督のメッセージがそのタイトルに感じられると私は思いました。

それにしても親友のこの人のゲイくささは一体何なんだろう。
顔や体つきやしぐさがどうこうっていうんじゃなくて、あまりに親友のために尽くしすぎていて、行き過ぎ感を感じます。作中でも「あんたあいつの何なのよ」「お前には分かんねえよ」みたいなセリフが出てくるんですが、え、なに、腐?腐展開なの?BLなの?って、腐ってない私ですら思える献身ぶりでございました。でもこれが男同士の友情ってもんなんだよ、っていうことなんだろう……ね……。それにしたって行きすぎだと思うよ。まあ友情としてはとてもアツいけど。

余談ですがポスターは漫画「ツルモク独身寮」の窪之内英策さんです。古すぎて伝わらないかもしれない……。久々にこの方のイラストを劇場で見かけて「うわああ!」ってテンション上がったものでした。最近はお元気にしてらっしゃるんでしょうかね……。


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