2009年/アメリカ
ガイ・リッチ―監督
あらすじ:
脳みそ筋肉寄りのシャーロックが推理そこそこに敵をなぎ倒します。
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一時期ミュージック・クリップ畑から映画畑に転身する監督が多かったように思います。スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリー、そして今作の監督、ガイ・リッチー。
音楽畑からやってきた監督って一様に共通の特徴がありますよね。普通の監督って編集した映像に音楽を載せていくと思いますが、音楽畑からやってきた監督は、音楽に合わせて映像を編集します。アプローチが逆なんですね。そのため非常にリズミカルでテンポの良い映画になることが多いです。
「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」なんかもすごくリズミカルで、ガイ・リッチーって映画ファンって言うより音楽ファンとか、なんというか「ヴィレッジ・ヴァンガードが好きな層」あたりに受けてた監督だと思うんです。伝わる?これ。サブカルの表層をなぞったような層というか。映画そのものよりおしゃれな映画のポストカードを買ってウォールポケットに並べて入れるのが好きな層というか。
恥ずかしながらかくいう私も、一時期その層をなす一部を担っておりましたので、御多分に洩れずガイ・リッチ―が好きでした。でもねえ、ガイ・リッチーって単館系っていう感じが否めなかったの。一部に人気はあったけど、雰囲気オシャンティ映画で内容は二の次って感じだったので、ロバート・ダウニー・Jr!ジュード・ロウ!極め付けにシャーロック!!なんてビッグキャストにビッグタイトルで、大丈夫かおい、と。ガイ・リッチー大丈夫かと。日和ったんじゃないかと。心配したものです。
「メジャーシーンに躍り出た=日和った」かどうかはまあさておいて、実際劇場に足を運んでみれば心配することもなくちゃんと万人が楽しめる大衆娯楽映画になっておりました。リズミカルなガイ・リッチーの良さもちゃんと残っていて、いちいちすごくワクワクできますね。
マーク・ストロングが出てると私とてもそわそわワクワクしてしまうんですよね。彼って若い頃のアンディ・ガルシアにそっくりでない?アンディ・ガルシアかっこいいよね。だから当然マーク・ストロングもかっこいいよね。頭髪寂しいのにね。
頭髪寂しいといえばワトソン役のジュード・ロウも競うかのように頭がおさびし山ですが、この映画は「ハゲてるのにかっこいい二大巨塔」が夢の競演をしている奇跡の映画でもあります。
ちなみにこの二人は「スタイリッシュな小綺麗ハゲ」で、ブルース・ウィリスは「泥臭い小綺麗ハゲ」で、ニコラス・ケイジは「小汚い散らかりハゲ」です(当社調べ)。褒めてます。「褒めてます」って注釈毎回入れないといっつも貶してるようにしか見えないな私のブログって。
てっきりこの人がモリアーティをやるんだと思ってたのに、彼は原作にもいないオリジナルキャラでした。うーん。続編に出てくるモリアーティよりもこの人がモリアーティに適任だった気がするんだけどなあ。そこが少し残念でもあります。とても良い悪役。
この作品を見た当時は、「ちゃんと推理もやって、アクションも華麗で、それでいて従来のシャーロック像を壊していない。それなのに新しい。素晴らしい作品だなあ」と思ったものですが、BBCが現代版シャーロックのドラマで世界的ヒットを飛ばしている今改めてこの映画を観ると、「このシャーロックあんま推理してないな……」「最終的に物理で片づけるな……」という印象が先に立ちますね。
ベネ版「SHERLOCK」を観て(気が狂うほど大ファンですがこちらは映画ではないのでこのサイトでは取り上げない、と思います……私の理性が飛ばない限り。そして私の理性はものすごく飛びやすく出来ています)、「そうだよな、アクションだってやるけど本来のシャーロックって推理にウェイトを置くもんだよな」と我に返りました。ロバート版はいささかアクションの方にウェイトを置いております。でもそれだって間違いではないと思うんです。原作にも「バリツ」なる謎の柔術が出てきますしね。動きがあって深く考えずとも楽しめる。非常にハリウッドらしく大衆的で良い作品だと思います。
ロバート・ダウニー・Jrはこの作品の前後あたりまで薬物依存のイメージで(アイアンマンのキャスティングの時は当初制作スタジオから何があっても雇わないと宣言されていたとか)なかなかのハンデを負っていたようですが、現在の活躍を観ていると彼がそのまま消えずに良かったと心から思います。
どんな過去を持つにせよ、素晴らしい才能は評価されるべき。才能の世界に生きる人間は、やはり才能でのみ評価されるべきであると私は思っています。彼の人柄ももちろん好きなんだけどね。
これからも良い作品を生み出してほしいものです。
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