2015年6月25日木曜日

ウルフ・オブ・ウォール・ストリート……酒とクスリと詐欺師とゴロツキ


2013年/アメリカ
マーティン・スコセッシ監督

あらすじ:
コカインでガンギマりしながらウォール・ストリートで一発当てました。


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恥ずかしながら、この映画を観るまで、マーティン・スコセッシ作品をほぼ見たことがありませんでした。「タクシー・ドライバー」くらいかな?
なにせ巨匠でいらっしゃるし、ただでさえ脳内で参考にできる作品が「タクシー・ドライバー」だけだったもので、さぞかしシリアスで骨太なヒューマンドラマが始まるのだろう。すこし古臭かったりもするかもな……と思ってたら、なんだこれ酷い(褒め言葉)。

もうおじいちゃんなのに新しい事を開拓していく意気込みがすごく感じられるんですね。斬新な手法を使いながら、ちゃんと今まで培った老練な業も魅せてくれるような、痺れるシーンがそこかしこにちりばめられていました。映像だけで観る価値がすごいある。

主人公のジョーダン・ベルフォートさんは実在の人物だそうで。もうむっちゃくちゃやるんですね。コカイン吸いながら商談まとめるし、社内の女性社員と勤務中からセックスしまくるし、毎日毎日お祭り騒ぎで金ばらまいて、でも成功してる。本当にこんな会社があったんかいな。あったとしたら、バブルでみんな狂っていた時代だったのでしょう。
やる事が破天荒な割に、ジョーダンは小者です。小者だからこそむっちゃくちゃやるとも言える。
会社にとって大事な局面や、FBIに追い詰められている時、プレッシャーを与えられると彼はすぐコカインに逃げる。ウォール・ストリートで一旗揚げる前の彼は、大変勤勉で真面目なサラリーマンでした。彼が大きい事を成し遂げたいと願った時、借りれる力は全部借りたかったのかな、と思います。
やってることがクズなんだけど、彼の繊細さが垣間見えたりする所がなかなか彼を嫌いになれない所なんでしょうね。
自分に忠実だったこともあるし、仲間を大事にしたいからこそのクズを演じていたこともあるのだろうし。とにかく必死で、クズをやっていた。半分本音で、半分義理で。そうすることでいろんなものを守るしかなかったんだなあ。いろんなものを引き換えに失ったとしても。
彼のプライベートや純粋な部分を犠牲にして、馬鹿やってみんなと一緒になって大笑いしてただけに後半の仲間の裏切りには同情してしまう。クズなのに。しおしおになっちゃう彼に素直に「かわいそう!」と思えてしまう。その絶妙な表現がこの映画の魅力だと思います。


ディカプリオはいいおっさんになってきましたね!思春期に「タイタニック」でレオ様と囃し立てられる彼を観て、「王子かな?」と思った時期もありましたが、もう今や「おっさんだな?」としか思いません。でもいい歳の取り方をしたよね彼は。ブラッド・ピットは美男子にしかなれないおっさんだけど、ディカプリオは何にでもなれるおっさんだと思う。もちろんブラッド・ピットも好きですよ。

ただ、なんとなくディカプリオって共演者に食われるイメージすごく強い……とてもいい役者ではあるんです。私はとても好きです。だけど今回の映画では10分そこらしか出ていないマシュー・マコノヒーに全部持っていかれてる感じがしました。
ジョーダンの事をクズだクズだって言ったけども、マシュー・マコノヒー演じる元上司は身の危険を感じるレベルの怪人物。何をしたわけでもないんです。一緒にランチを食べに行っただけなんだけど、「やべえこいつ今笑ってるけど次の瞬間フォークで目を突いてくる」って思わせるような危ういキャラを見事に演じています。目とか本当にヤバい。キマッてる。すごく高級な高層ホテルのレストランで平然とコカインを勧めてくる。
この時のジョーダンはまだ薬物には染まってないし、誘いも断るんですが、後々のジョーダンの中にはこの上司が棲んでいたんでしょうね。5秒後には何をするか分からないような男で、相当の切れ者で、ウォールストリートのエリート。彼の理想象と、殺伐としたウォールストリートを突っ走っていった先のジョーダンの中には、常にこの上司がお手本にあったように思います。
きっとこの元上司もまた、弱い人間だったんだろうにね。

この映画、映像だけでなく人物の描き方やシーンの切り取り方、リズムの良さ、出演者の魅力の大きさがいちいち良かったので、この映画をとっかかりにして、スコセッシ監督のほかの映画も見てみよう!と思えたし、マシュー・マコノヒーってすげえなあー!と思って彼の作品を追ってみる気にもなりました。すごく得るものの大きい映画でした。スコセッシ監督の別作品や、マシュー・マコノヒー出演作についてはまた、別の機会に。


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